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『空の青さを知る人よ』

 埋められない喪失と、拭えない後悔と、少しばかりのファンタジーあの花にあったモノが、ここさけにもあったモノが、この作品にもしっかりとあった。そして、その少しばかりのファンタジーが、現実を生きるぼく達に少しばかりの勇気を与えてくれる。それもまた同じであった。

 人間、いつまでも子どものままではいられない。かつて思い描いた夢を叶えられるのも、自らの意志を貫き通せるのも、心の純数さや健全さや真っ直ぐさをキープし続けられるのも、ほんの一握りの人間だけ。大半は無数の失われたモノと引き換えに、この現実を生きていくための器用さを手に入れ、どうにかこうにか大人になっていく。諦めたり割り切ることにも慣れ、無闇に人に期待することもやめ、身の丈に合った生き方や幸福を見据えて生きていく。

 でも、それが決して悪いわけじゃない。自分にそう言い聞かせたいだけなのかもしれないが、ここまで生きてきた日々も出会いも選択も間違いなんかじゃない。後悔や負い目の類いはどこまで行っても付き纏うが、手を抜かずに今を本気で生きている自覚があるのなら、それでいいじゃない。その自覚がないなら色々と考え直さなきゃいけないけれど、人生の在り方も、幸せの在り方も、人それぞれ。

 ただ、そんな風に考えるようになったのはいつからだろう。少なくとも18歳の頃の自分は違っていた。何の根拠もなく、先述したことの多くを否定していたとだろう。所詮無い物ねだりでしかないけれど、あの頃の自分にできなかったことを今の自分はできて、あの頃の自分ができたことを今の自分はできなくなっている。どうしたって全ては手に入れられない。

 18歳の頃のぼくが33歳になった今のぼくを見たのなら、残念ながらきっと失望してしまうと思う。けれど、それが分かってんだったら「やるっきゃないだろ、俺!」って話なわけで、過去に囚われるんじゃなく過去を糧にして、今を、未来を、前を向いて生きていかなくっちゃいけないなって。同時に、今目の前にある大切なモノを見落としちゃいけないなってそうすることでしかあの頃の自分に報いることはできないなって。

 あの花、ここさけが好きな人なら、きっと響くモノがあると思います。こんなにも自然に涙が溢れ出た作品は、とても久しぶりでした。

青春★★★★
恋 ★★
エロ★
サスペンス★★★
ファンタジー★★★
総合評価:A